No.574
長崎に来ています。全互連の西日本ブロック会議が長崎で開催され、前会長として参加したのですが、会議後の懇親会も感染対策で早々に終了しました。ホテルに戻って読書でもしようとか思っていたところ、なんとホテルの真横にシネコンがあるではないですか! 早速飛び込み、10日で公開終了の日本映画「嘘喰い」を鑑賞。人と同じく、映画だって一期一会。「常在戦場」ならぬ「常在映画館」。いつ何時でも、場所はどこでも、映画を観続けるわたし。ただし、かなり残念な内容でしたけど。(涙)
ヤフー映画の「解説」には、こう書かれています。
「『週刊ヤングジャンプ』で連載された迫稔雄のギャンブル漫画を、『スマホを落としただけなのに』シリーズなどの中田秀夫監督が実写映画化。『嘘喰い』の異名を持つ謎の天才ギャンブラーが、大金と生死を懸けたギャンブルバトルが行われる闇組織の頂点を目指す。主人公・斑目貘を『きみの瞳が問いかけている』などの横浜流星、彼と出会い人生が一変する青年・梶隆臣を『小さな恋のうた』などの佐野勇斗が演じる」
ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「日本の政財界そして裏社会をも牛耳る闇のギャンブル倶楽部『賭郎』。その会員には政府の要人や超一流のイカサマ師たちが名を連ね、勝負に負けると生死を問わず代償を取り立てられる。『嘘喰い』の異名を持つ天才ギャンブラーの斑目貘(横浜流星)は、かつて賭郎の頂上決戦で敗れ会員権を剥奪されていた。倶楽部を荒らす新たな会員の佐田国一輝(三浦翔平)のうわさを聞きつけた貘は、賭郎の頂点を目指して究極のデスゲームに挑む」
映画のオープニングは、都心のビルの屋上でのギャンブルのシーンです。横浜流星演じる斑目貘と、賭郎の頂点に君臨し「お屋形様」と呼ばれる切間創一(櫻井海音)とのギャンブルですが、なかなかゴージャスな舞台設定で、わたしは「おっ、面白そうじゃん!」と思いました。しかし、そのギャンブルの内容が「これから1時間の間にこのビルの上空を飛行機が飛ぶかどうか?」であることを知り、一転して「なんじゃ、そりゃ?」と不安になりました。だって、そんなもの、航空情報を調べればすぐわかることではないですか。しかし、そう問題は簡単ではなく、獏はハメられて「賭郎」の会員権を剥奪されるのでした。
面白く観れたのはそのあたりまでで、後は「なんじゃ、こりゃ?」の連続。ババ抜きで負けたら絞首刑にされるなど、あまりにも荒唐無稽な展開で、まるでマンガでした。そう、この映画はマンガが原作なのです。でも、マンガが原作の映画だって名作はたくさんあります。最近も、一条真也の映画館「前科者」で紹介した有村架純の主演映画がそうでした。ところが、この映画、途方もなくチープな作りになっているのです。わたしは原作マンガを読んでいませんが、大ヒットしただけあって名作なのでしょう。その実写化が「最悪」だったと、多くの人がレビューに書いています。
そもそも、この映画のテーマが「ギャンブル」というのが、わたしの興味を引きませんでした。わたしはギャンブルにまったく関心がなくて、海外でカジノに付き合いで行っても、連れが遊び終わるまでソファーで読書しているような人間なのです。生まれ育った小倉は競輪の発祥地ですし、小倉競馬も有名です。近隣にはボートレース場やオートレース場もあります。そんなギャンブル都市に住んでいるわりには、本当にオクテで、麻雀すらルールを知りません。でも、この映画に登場するギャンブルはルーレットやババ抜きだったので、わたしにもルールがわかりました。
今を時めく横浜流星はカッコいいのですが、なんか、今ひとつパンチがないというか、輝きを感じませんでした。彼が演じる斑目貘は史上最高の天才ギャンブラーであり、どんなイカサマも悪魔的IQで見破り、「嘘喰い」という異名を誇ります。勝利を確信するとカリカリ梅をかじるのですが、説明もなくいきなりそのキャラを前面に出されても戸惑います。横浜流星は、一条真也の映画館「あなたの番です 劇場版」で紹介した映画の役の方がずっと良かったです。やはり極真空手の有段者である彼には、派手なアクションシーンが似合いますね。彼の使い方がもったいないという気がしてなりませんでした。
「あなたの番です 劇場版」では、横浜流星の相手役は乃木坂46の元メンバーである西野七瀬でした。「噓喰い」では、やはり乃木坂46の元メンバーの白石麻衣が相手役を務めます。彼女が演じる鞍馬蘭子はヤクザ・鞍馬組の組長にして闇カジノを仕切るオーナーです。巧妙なイカサマで客からカネをむしり取る恐ろしい女ですが、白石麻衣が適役だったとは思えません。演技そのものはは下手ではなく、表情などもよく作っているのですが、やはりキャラに合わないのです。あと、映画チラシでは鞍馬蘭子の柔肌の太ももが露わになって写っていましたが、実際の映画にはそんなシーンは一切なし。お色気詐欺か? わたしは、「あんた、嘘つきだね。」と言いたくなりました。(笑)
白石麻衣が出演した映画なら、一条真也の映画館「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」で紹介した作品の方が良かったです。これも「嘘喰い」と同じく、「リング」シリーズの中田秀夫監督の作品です。中田監督は清水祟監督とともにJホラーの二大巨匠とされています。「スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼」では、白石麻衣が殺人鬼の恐怖に脅えますが、非常に良い表情でした。ホラー映画というのはただ怖いだけでなく、「絶叫クイーン」という言葉に代表されるような美女の存在が欠かせません。中田監督の「リング」シリーズには、松嶋菜々子、中谷美紀、竹内結子、深田恭子、池田エライザ、清水監督の「呪怨」シリーズには、奥菜恵、伊東美咲、酒井法子、新山千春、市川由衣といった美女たちが恐怖の絶叫シーンを演じてくれました。わたし個人的意見ですが、白石麻衣にはヤクザの女組長よりも絶叫クイーンが合っています!
それにしても、「リング」シリーズが日本の、いや世界のホラー映画史上に残るほどの大傑作だったのに、「嘘喰い」のクオリティの低さは一体どうしたのでしょうか? とても同じ監督がメガホンを取ったとは思えません。横浜流星や白石麻衣の無駄遣いだけでなく、ギャンブルの立会人を演じた村上弘明とか、本郷奏多なども、じつに残念な使われ方をしています。さらには、姑息な財務大臣を演じた鶴見辰吾に至っては「あなた、このような役でこの映画に出演されて、本当に後悔していませんか?」と問いたくなるような気の毒な使われようでした。
他にも「嘘喰い」の原作マンガには、さまざまなキャラクターが登場するのでしょう。一条真也の映画館「東京リベンジャーズ」で紹介した映画なども原作はマンガですが、実写化のキャスティングは秀逸で、原作ファンを納得させるものがありました。「東京リベンジャーズ」も「嘘喰い」も若手イケメン俳優がたくさん出演していますが、両作品のクオリティはどうしてこんなにも違うのか? 「もしかしたら、中田監督に原作へのリスペクトや愛情が足りなかったのでは?」と思うのは、わたしだけではありますまい。