No.660
A24のホラー映画「MEN 同じ顔の男たち」をシネプレックス小倉で観ました。予告編から「グリーフケアの要素が多い作品では?」と思っていたのですが、主人公が抱えていたのはグリーフというよりトラウマで、それが途方もなく異様な形で表現されていました。ネットの評価が異常に低かったのですが、「やはりな」という感じです。
ヤフー映画の「解説」には、「『エクス・マキナ』などのアレックス・ガーランド監督によるホラー。目の前で夫を亡くした女性が、訪れた田舎町で誰もが同じ顔をした男たちと遭遇する。『もう終わりにしよう。』などのジェシー・バックリー、『ピータールー マンチェスターの悲劇』などのロリー・キニア、ドラマ「プレス 事件と欲望の現場」などのパーパ・エッシードゥのほか、ゲイル・ランキン、サラ・トゥーミィらが出演する」と書かれています。
ヤフー映画の「あらすじ」は、以下の通りです。
「夫ジェームズ(パーパ・エッシードゥ)の死を目の当たりにしたハーパー(ジェシー・バックリー)。心に負った傷を癒やそうとイギリスの田舎町を訪れた彼女は、豪華なカントリーハウスの管理人を務めるジェフリー(ロリー・キニア)の出迎えを受ける。町を散策するハーパーは、少年、牧師、警察官など出会う男たちの顔が、皆ジェフリーと全く同じであることに気がつく。さらに廃トンネルからつけてくる謎の影をはじめとする怪現象や、夫の死のフラッシュバックによって、彼女は追い詰められていく」
トンネルのシーンは幻想的でした(映画.com)
ただ、この映画、女性が観たら、けっこう怖いかもしれません。特に、1人暮らしの女性でストーカーや侵入者に怯えた経験のある人なら、非常に怖いと思います。わたしをはじめ男性陣にはあまり怖くないでしょうね。この映画について、わたしはホラーとしては基本的に評価していませんが、前半で主人公のハーパーが森を散策するシーンは非常に美しかったですし、トンネルでハーパーが声を反響させるところも幻想的で良かったです。しかしながら、とにかくハーパーの周囲に現れる変な男たちがひたすらキモかったです。すべてはハーパーの妄想なのか、それとも現実に起こった恐ろしい出来事なのか?
同じ顔の男たちに執拗に追われる様は不気味でしたが、なんとハーパーの夫ジェームズを演じたパーパ・エッシードゥ以外は、すべてロリー・キニアという俳優が演じていたそうですね。これには驚きました。原題は「MEN」で、「同じ顔の男たち」という邦題はネタバレになっているように思うのですが。一条真也の映画館「ヘレディタリー/継承」、 「ミッドサマー」、「LAMB ラム」で紹介した映画のように、A24が作るホラーはグロテスクな作風のものが多いですが、本作もそうでした。ラストのラブクラフト的な異形のモンスターはインパクトがありました。映画評論家の町山智浩氏も指摘していましたが、このモンスターはホラー映画史に残る存在になると思います。
白人の妻と黒人の夫(映画.com)
ハーパーとジェームズの夫婦は、妻が白人で、夫が黒人。最近、こういう肌の色を超えた夫婦が登場する映画が急に増えた気がします。たとえば、一条真也の映画館「ファイブ・デビルズ」で紹介したホラー映画も主人公の妻が白人で、夫が黒人でした。一条真也の映画館「ストレンジ・ワールド/もうひとつの世界」で紹介したディズニー・アニメには妻が黒人で、夫は白人の夫婦が登場しました。わたしは別に人種差別主義者でも何でもないので一向に構いませんが、最近この手の夫婦が多いのは多様性表現のアップデートでしょうか?
ちょっと前までは、社会の偏見とか周囲の反対とかもあったでしょうから、黒人と白人の夫婦という設定には説明があったように思います。ずばり、障害を超えての結婚にはストーリーが存在したのです。しかし、最近は、まったく説明もなく、いきなり黒人と白人の夫婦が当たり前のように登場するのです。まあ、本当にどうでもいいですけど。何が起きているのかも一切明かされずに物語は進み、謎の男たちの正体も最後までわかりませんでした。そういった意味で、非常にストレスが残った映画でしたね。