No.893


 アメリカ・オーストラリア映画でSFアクション大作の「マッドマックス:フュリオサ」を観ました。アクションの迫力はもちろんのこと、主演を務めたアニャ・テイラー=ジョイの熱演で、前作「マッドマックス 怒りのデス・ロード」ほどではないにしろ女性解放のドラマでしたね。
 
 ヤフーの「解説」には、「『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に続き、シリーズの生みの親であるジョージ・ミラーが監督を務めるアクション。世界崩壊から45年後、故郷からさらわれたフュリオサがバイカーたちの軍門に降り、荒廃した世界で城塞都市の支配者イモータン・ジョーとの戦いに巻き込まれる。主人公フュリオサを『ラストナイト・イン・ソーホー』などのアニャ・テイラー=ジョイ、バイカー軍団のリーダーを『アベンジャーズ』シリーズなどのクリス・ヘムズワースが演じる」とあります。
 
 ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「世界崩壊の45年後。故郷である緑の地からさらわれ、家族と引き離されたフュリオサ(アニャ・テイラー=ジョイ)は、荒地を掃討するディメンタス将軍(クリス・ヘムズワース)率いるバイカー軍団の手に落ちる。彼らは水や緑、石油、土地などをめぐり、城塞都市を統べるイモータン・ジョーと争っていた。フュリオサは彼らと行動を共にしながら故郷への帰還を目指す」
 
「マッドマックス:フュリオサ」の予告編には、「偉大なる監督ジョージ・ミラー」という称賛の文字が浮かび上がっています。ジョージ・ミラーは、1945年生まれのオーストラリアのプロデューサー、映画監督、脚本家です。父方のドイツ人と母方のギリシャ人の家系の子としてオーストラリアクイーンズランド州ブリスベンで生まれました。医者を志して医科大学に進学。学生時代に短編映画を制作し映画コンクールに出品したところグランプリを獲得したのがきっかけで、テレビと映画界で働くようになりました。短編を数本制作した後、1979年の映画「マッドマックス」で監督・脚本を担当し、長編映画デビュー。「マッドマックス」は、後にシリーズ化されて世界的に大ヒットし、映画界で注目される存在となります。
 
「マッドマックス」以降は、映画監督以外にもテレビドラマや映画のプロデューサー・脚本家として幅広く活動しており、総合的なプロデューサーとしての役回りが多いです。主な監督作品には、「マッドマックス」シリーズの他、「イーストウィックの魔女たち」(1987年)、「ベイブ/都会へ行く」(1998年)、「ハッピーフィート」(2006年)などがあります。「マッドマックス」シリーズとは、「マッドマックス」(1979年)、「マッドマックス2」(1981年)、「マッドマックス/サンダードーム」(1985年)、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015年)、「マッドマックス:フュリオサ」(2024年)の5作品です。ただし、「フュリオサ」はスピンオフ作品であり、「デス・ロード」の前日譚となります。
 
 シリーズの最高傑作といえるのが、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」です。「第88回アカデミー賞」の作品賞を含む10部門にノミネートされ、6部門で受賞しました。荒廃した近未来を舞台に妻子を暴走族に殺された男の壮絶な復讐劇を描いています。資源が底を突き荒廃した世界、愛する者も生きる望みも失い荒野をさまようマックス(トム・ハーディ)は、砂漠を牛耳る敵であるイモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)の一団に捕らわれ、深い傷を負ってしまいます。そんな彼の前に、ジョーの配下の女戦士フュリオサ(シャーリーズ・セロン)、全身白塗りの謎の男、そしてジョーと敵対関係にあるグループが出現。マックスは彼らと手を組み、強大なジョーの勢力に戦いを挑むのでした。
 
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」に登場したフュリオサは、片腕の女戦士です。その過去は謎に満ちていましたが、最新作「マッドマックス:フュリオサ」ですべてが明らかになりました。わたしは「マッドマックス」シリーズを観たことがありませんでしたが、映画コラムニストのアキさんから薦められて「マッドマックス:フュリオサ」を観ることにしました。これまで、過去作を観ていないシリーズ最新作を観ることはけっしてありませんでしたが、アキさんから「トップガン」「ミッション・インポッシブル」「スパイダーマン」などの最新作を紹介されて以来、すっかりわが映画鑑賞の習慣が一変しました。今回は、「デス・ロード」だけは事前に鑑賞しました。
 
「デス・ロード」でシャーリーズ・セロンが演じたフュリオサの若き姿を、アニャ・テイラー=ジョイが熱演しています。ブログ「クイーンズ・ギャンビット」で紹介したネットフリックスのドラマ、一条真也の映画館「スプリット」「ラストナイト・イン・ソーホー」「アムステルダム」「ザ・メニュー」などの映画にも出演しており、その高い演技力には注目していました。彼女は現在28歳ですが、ハリウッドの20代の女優陣の中ではダントツの存在感であると言えるでしょう。特に彼女は目力が強く、それは「マッドマックス:フュリオサ」でも遺憾なく発揮されていました。
 
「マッドマックス」シリーズには、一貫して暴力が描かれていますが、その根底にあるものは「復讐」です。フュリオサも少女時代に攫われ、母親を殺された恨みを晴らすために復讐を誓います。「鬼滅の刃」の主人公・竈門炭治郎と同じく、フュリオサも復讐を心に誓っており、それが彼女のエネルギーとなっているのです。「グリーフ」というものが「リベンジ」に向かうわけですが、それは「マッドマックス」第1作でメル・ギブソン演じるマックスにも同じことが言えます。さらには、フュリオサの復讐相手であるディメンタス(クリス・ヘムズワース)も愛する娘を亡くしており、グリーフを抱えていました。彼は亡き娘が愛したクマのぬいぐるみを幼いフュリオサに与えましたが、グリーフを抱えた者同士が殺し合う世界ほど悲しいものはない......わたしは、そのように思いました。
 
 最後に、本国アメリカでも、5月31日から公開された日本でも、「マッドマックス:フュリオサ」の観客動員が悲惨なことになっている現状について。米国「ハリウッドリポーター」でも酷評されているようですが、やはり今回の「フュリオサ」にはシリーズの主人公であるマックスが不在なこと、最初から最後までアクション・シーンの連続だった前作「怒りのデス・ロード」に比べて、アクション・シーンが少なく、ドラマ部分が多かったことなどが敗因のようです。でも、わたしが思うに、「怒りのデス・ロード」でフュリオサを演じたシャーリーズ・セロンが素晴らしすぎましたね。アニャ・テイラー=ジョイも熱演しましたが、残念だったのは体が華奢すぎてリアリティが感じられなかったこと。腕なんか折れそうなくらい細かったですし、あれで女戦士というのは非現実的でしょう。一方のシャーリーズ・セロンは体も鍛えあげていました。もう一度、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」が観たい!