No.908
SFホラー映画「クワイエット・プレイス DAY1」をシネプレックス小倉で観ました。一条真也の映画館「クワイエット・プレイス」、「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」に続くシリーズ第3弾です。前2作に主演したエイミー・ブラントがわたしは好きなのですが、今作には出演していないので物足りなかったです!
ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「音に反応して人間を襲う何者かが潜む世界を舞台に、ある一家のサバイバル劇を描いたホラー『クワイエット・プレイス』シリーズの第3弾。田舎町から大都市・ニューヨークへと舞台を移し、何者かの襲来が始まり世界が沈黙するに至った最初の日の悪夢を映し出す。前2作のジョン・クラシンスキーに代わり、『PIG/ピッグ』などのマイケル・サルノスキが監督を務めている。『リトル・モンスターズ』などのルピタ・ニョンゴ、ドラマ『ディケンジアン』などのジョセフ・クインのほか、アレックス・ウルフ、ジャイモン・フンスーらが出演する」
ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「音を立てるもの全てに襲いかかる謎の生命体が、ある家族を襲撃した日から471日前。謎の生命体がニューヨークに突然襲来し、人々が逃げ惑う中、猫を抱いて通りを歩いていたある女性(ルピタ・ニョンゴ)は、突如として生きるか死ぬかのサバイバルを強いられる」
シリーズ第1作の「クワイエット・プレイス」(2018年)は、音に反応し人間を襲う何かが潜む世界で、音を立てずに生き延びようとする一家を映し出します。生活音が未曽有の恐怖を生み出し、一家に次々と危機が訪れる物語です。音に反応して襲撃してくる何かによって、人類は滅亡の危機にさらされていました。リー(ジョン・クラシンスキー)とエヴリン(エミリー・ブラント)の夫婦は、聴覚障害の娘ら3人の子供と決して音を立てないというルールを固く守ることで生き延びていました。手話を用い、裸足で歩くなどして、静寂を保ちながら暮らしていましたが、エヴリンの胎内には新しい命が宿っていたのでした。
ホラー映画史に残る社会現象級大ヒットとされた第1作に続いて、第2作の「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」(2021年)は、新体感のサバイバル・ホラー映画でした。夫を失いながらも生き延びた母子が新たな脅威に遭遇する物語ですが、子どもの成長や家族愛の描き方が見事でした。世界は、音に反応し人間を襲う何かによって荒廃していました。夫のリー(ジョン・クラシンスキー)と家を失ったがかろうじて生き延びた妻のエヴリン(エミリー・ブラント)は、赤ん坊と2人の子供(ミリセント・シモンズ、ノア・ジュープ)と一緒に、新たな避難場所を探しに行くのでした。
そして、今回の最新作「クワイエット・プレイス DAY1」ですが、一連の不条理な状況になった第一日目を描くスピンオフ映画で、いわば前日譚となっています。前日譚といえば、一条真也の映画館「マッドマックス フュリオサ」で紹介したSF映画のようになかなか難しいジャンルですが、この「クワイエット・プレイス DAY1」はうまく出来ていたと思います。「クワイエット・プレイス」の第一作を観た人なら誰でも、「そもそも何故、こんな状況になったのか?」と思っているはずですので、前日譚は需要があると言えるでしょう。それでも、不条理な出来事には変わりはないですけどね。
「クワイエット・プレイス DAY1」の舞台は、ニューヨークです。ニューヨークといえば世界の首都ですが、ここが不条理な攻撃を受けるわけです。しかし、わたしたちには既視感があります。そう、2001年9月11日に起こった米国同時多発テロです。その日の朝、アメリカ合衆国北東部の空港から西海岸に向けて出発した旅客機計4機が、イスラム原理主義過激派アルカイダのメンバー計19人にハイジャックされました。アメリカン航空11便とユナイテッド航空175便の2機はニューヨーク州ニューヨークのワールドトレードセンター(世界貿易センタービル)に向かい、アメリカン便がノースタワー(北棟)に、ユナイテッド便がサウスタワー(南棟)に激突。2つのビルは倒壊し、ニューヨークは狂乱のきわみに陥りました。
「クワイエット・プレイス DAY1」は全編が緊迫感に包まれていますが、唯一、ほっとするのがルピタ・ニョンゴが演じる主人公サムが飼っている猫のフロドがスクリーンに映っているときです。音を出したら即死という状況の中で、鳴き声を出すペットの存在など問題外ですが、フロドは声が出ないのだと知って納得しました。まあ、ご都合主義のようには感じますが・・・・・・。猫を連れて歩くことは一見ハンディのように思えますが、じつはフロドは主人公たちを励まし、癒し、救う役割を果たしていました。アカデミー賞に最優秀ドッグ賞や優秀キャット賞があれば、一条真也の映画館「ARGYLLE/アーガイル」で紹介したアメリカ・イギリス合作映画に登場した猫のアルフィーにあげたいと思っていましたが、「クワイエット・プレイス DAY1」のフロドが新たに有力候補に加わりましたね!
この「クワイエット・プレイス DAY1」は登場人物がきわめて少ないです。舞台はニューヨーク全域にわたるので広く、そこを逃げ惑う群衆はいくらでもいるのですが、猫のフロド以外では、ルピタ・ニョンゴが演じる黒人女性サムとジョセフ・クイン演じる白人男性エリックの2人が主たるキャラクターです。サムはホスピスで暮らす末期がん患者で、エリックは精神的に脆い青年という設定ですが、弱者である2人は助け合い、さまざまな危機を乗り越えていきます。それは相互扶助であり、相互ケアそのものでした。最後には、ある利他的行為が行われ、感動的なラストを用意しました。「互助」の果てに「利他」が描かれるラストは、特に日本人受けするのではないでしょうか。
ところで、エリックはどんな時でもネクタイを外しませんでした。謎の攻撃者から逃げるときも、水の中でも、いつもネクタイを着けていました。「さすが、お洒落なニューヨーカーだな!」と思いましたが、わたしは絶対にネクタイを外さないことで知られる1人の経営者を連想しました。その人は関西地方の冠婚葬祭互助会の社長さんなのですが、旅行のときも、どんなに暑くてもネクタイ着用の方なのです。それでも、先日の香港・マカオの海外視察ではネクタイを外している姿を久々に目撃しました。「ああ、地球温暖化はついに、この人にネクタイを外させたのだな!」と感心した次第です。まあ、あくまで余談ですが。