No.1307


 7月10日、理事長を務める一般財団法人 冠婚葬祭文化振興財団の経営会議を終えた後、北九州に戻りました。9日、一条真也の映画館「アイ・ワズ・ア・ストレンジャー」で紹介したアメリカ・パレスチナ・ヨルダン合作映画をTOHOシネマズシャンテで観た後、韓国映画「サヨナラの引力」をTOHOシネマズ日本橋で観ました。さすが韓国映画だけあって、脚本がわかりやすく、恋愛映画の傑作に仕上がっていました。
 
 ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「かつて愛し合った男女が思いがけない再会を果たすラブロマンス。大学時代に出会って恋に落ちたものの別れてしまった男女が、それから10年後に飛行機内で再び顔を合わせる。メガホンを取るのは『82年生まれ、キム・ジヨン』などのキム・ドヨン。『モガディシュ 脱出までの14日間』などのク・ギョファン、『チャンス商会 ~初恋を探して~』などのムン・ガヨンらが出演する。
 
 ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「2008年、ソウル。ある夏の日、大学生のウノ(ク・ギョファン)とジョンウォン(ムン・ガヨン)は長距離バスの中で出会う。ゲーム作家に憧れるウノと建築家を目指すジョンウォンは、それぞれの夢や不安を語り合い、支え合っていくうちに恋に落ちるが、さまざまな事情から二人は別れを選ぶ。それから10年後の2024年、ウノとジョンウォンはソウルに向かう飛行機の中で再会する」
 
 読みやすい本に対して「リーダブル」という表現があるとしたら、映画は「ウォッチャブル」と言うのでしょうか。本作「サヨナラの引力」はまさにそんな感じで、とにかく観やすく、物語にスッと入っていけました。一条真也の映画館「口に関するアンケート」一条真也の映画館「氷血」で紹介した作品のように、最近は脚本の出来の悪い日本のホラー映画を続けて観たので、本作の脚本の素晴らしさが光ります。ムン・ガヨンという女優は初めて知りましたが、とても美しい人ですね。日本では永野芽衣に似ていると言われているそうですが、わたしは「乃木坂46」出身の山下美月に似ていると思いました。
 
「サヨナラの引力」は、かつて深く愛し合った男女の別れと再会を描いたラブストーリーです。「韓国の恋愛映画といえば外れなし」と思っていましたが、近年はヒットが難しいとされていたとか。しかし、本作が2025年の大晦日に韓国で公開されると、口コミで評判を呼び、3週連続で興行ランキング1位を記録。観客動員260万人を突破しました。久々に恋愛映画が大ヒットしたことは快挙として大きな注目を集め、韓国映画の新たな金字塔となったのです。正直、ツッコミ所はいろいろとありますが、とにかく気持ち良く観ることができる作品でした。
 
 本作は、2019年のNETFLIXの中国映画「僕らの先にある道」のリメイクです。キム・ドヨン監督はネトフリで鑑賞したオリジナルに深く魅了されながらも、配信開始から間もないために、当初はリメイクのオファーを断ったそうです。しかし3回目のオファーでようやく受けた際、「韓国を舞台にしたら、私なりに何かできるのではないか?」と考え、監督を引き受けることを決意したといいます。ちなみに、日本版をリメイクするならムン・ガヨンが演じたジョンウォン役は山下美月しかいません!
 
 キム・ドヨン監督は、「リメイクを手掛ける理由は、まず元々の作品が好きだからなんですよね。だからこそ、自分が原作の何に感動したのか、どこをおもしろいと思ったのかを忘れないようにしています。オリジナル版では、過去と現在をモノクロとカラーで描写し分ける演出や、父からの手紙がとても気に入ったので、そのまま残しています。一方で、時代設定については、リーマン・ショックを意識して2008年に変更しました。恋愛は一組のカップルの個人的なものですが、同時に社会的な影響も受けるものだと思うからです。互いに愛し合うだけでなく、夢に向かう物語でもあるので、この時代が最も適切だと判断しました」と語っています。
 
「恋愛は一組のカップルの個人的なものですが、同時に社会的な影響も受けるもの」「互いに愛し合うだけでなく、夢に向かう物語でもある」というキム・ドヨン監督の言葉から、一条真也の映画館「花束みたいな恋をした」で紹介した2021年の日本映画を連想しました。ある晩、終電に乗り遅れた大学生の山音麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)は、東京・京王線の明大前駅で偶然出会います。お互いに映画や音楽の趣味がよく似ていたこともあり、瞬く間に恋に落ちた2人は大学卒業後、フリーターとして働きながら同居を始めます。ずっと一緒にいたいと願う麦と絹は、今の生活を維持することを目標に、就職活動を続けるのですが、次第に心はすれ違っていきます。脚本を担当したのは、坂元裕二。
 
 韓国人の男女の出会いと別れと再会を描いているという点では、一条真也の映画館「パスト ライブス/再会」で紹介した2024年のアメリカ・韓国合作映画も思い出しました。離れ離れになっていた幼なじみの男女が、24年間のすれ違いを経てニューヨークで再会を果たす物語です。ソウルに暮らす12歳のノラとヘソンはお互いに惹かれ合っていましたが、ノラが海外に移住したことで離れ離れになります。12年後、ニューヨークとソウルでそれぞれの道を歩んでいた2人は、オンライン上で再会してお互いへの思いが変わっていないことを確かめ合いますが、すれ違いも起こします。さらに12年が経ち、36歳になったノラ(グレタ・リー)は作家のアーサーと結婚していたが、ヘソン(ユ・テオ)はそれを知りながらも彼女に会うためにニューヨークへ向かうのでした。
 
 さらに、社会を反映しているという点では、やはり一条真也の映画館「パラサイト 半地下の家族」で紹介した2019年のアメリカ映画を連想してしまいます。同作は、韓国のポン・ジュノ監督の大ヒット作です。韓国の半地下住宅に住むキム一家は全員失業中で、日々の暮らしに困窮していました。ある日、たまたま長男のギウ(チェ・ウシク)が家庭教師の面接のため、IT企業のCEOを務めるパク氏の豪邸を訪ね、兄に続いて妹のギジョン(パク・ソダム)もその家に足を踏み入れます。第72回カンヌ国際映画祭では韓国映画初となるパルム・ドール。第92回アカデミー賞では作品賞を含む6部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の最多4部門を受賞。本作「サヨナラの引力」でも生活費の乏しい若い2人が半地下の部屋に住んで心をすり減らしていくさまが描かれていました。
 
 ジョンウォンを演じたムン・ガヨンは山下美月に似ていると書きましたが、ウノを演じたク・ギョファンは、ロンドンブーツ1号・2号の田村淳に似ています。ネットでも、2人はよく似ていると書かれていますね。こう言っては何ですが、美しいムン・ガヨンに比べて、ク・ギョファンはちょっと華がありませんでした。若い頃はメガネをかけている設定でしたが、どうしてもぺ・ヨンジュンの二枚目的メガネ姿と比べてしまいます。ヨン様とチェ・ジウが主演した「冬のソナタ」が魅力的だったように、恋愛ドラマにはやはり美男美女が欠かせません。その意味で、ク・ギョファンは物足りなく感じてしまった次第です。それでも、「サヨナラの引力」はラブストーリーの傑作であることに変わりはありませんが。