No.1039


 日本映画「悪い夏」をシネプレックス小倉で観ました。「クズとワルしか出てこない!」というキャッチコピーが印象的ですが、本当にそんな内容でした。クズとワルが全員でぶつかり合う、まるでバトルロイヤルのような終盤のカオス・シーンには圧倒されました。面白かったです!

 ヤフーの「解説」には、「『正体』シリーズの原作などで知られる染井為人の横溝正史ミステリ大賞優秀賞受賞作を映画化。市役所勤務の真面目な公務員が、ある出会いをきっかけに運命を狂わせていく。『アルプススタンドのはしの方』などの城定秀夫が監督、『ある男』などの向井康介が脚本を担当。『東京リベンジャーズ』などの北村匠海が主人公、彼を破滅へと導くシングルマザーを『ナミビアの砂漠』などの河合優実、たくらみの首謀者を『愛にイナズマ』などの窪田正孝が演じるほか、伊藤万理華、毎熊克哉、木南晴夏らが共演する」と書かれています。
 
 ヤフーの「あらすじ」は、「市役所の生活福祉課に勤める佐々木守(北村匠海)は、同僚が生活保護受給者のシングルマザーに肉体関係を迫っているらしいという相談を受け、真相を確かめようとその女性・林野愛美(河合優実)の家を訪ねる。その後、彼女のもとを訪ねるうちに彼自身が愛美との交際に発展するが、それは裏社会の住人・金本龍也(窪田正孝)らが仕組んだわなだった。真面目な公務員だった守の人生は転落の一途をたどっていく」です。
 
 映画の原作小説『悪い夏』は、第37回横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞した染井為人のデビュー作。「クズとワルしか出てこない」と話題を呼び、累計18万部以上を売り上げたノワールサスペンスです。アマゾンの内容紹介には、「26歳の守は生活保護受給者のもとを回るケースワーカー。同僚が生活保護の打ち切りをチラつかせ、ケースの女性に肉体関係を迫っていると知った守は、真相を確かめようと女性の家を訪ねる。しかし、その出会いをきっかけに普通の世界から足を踏み外して――。生活保護を不正受給する小悪党、貧困にあえぐシングルマザー、東京進出を目論む地方ヤクザ。加速する負の連鎖が、守を凄絶な悲劇へ叩き堕とす!」と書かれています。
 
 映画「悪い夏」では、主役の佐々木守を演じた北村匠海が良かったです。彼の存在を初めて知ったのは、一条真也の映画館「君の膵臓をたべたい」で紹介した2017年の作品でした。その後、一条真也の映画館「東京リベンジャーズ」で紹介した2021年の作品、一条真也の映画館「法廷遊戯」で紹介した2023年の作品などで彼の演技をスクリーンで観ましたが、いずれも名演でした。本作「悪い夏」では、まじめな公務員が狂気を帯びていく怪演を見せてくれました。今や、北村匠海はすっかり若手実力派俳優の安定感があります。

 一方、生活保護受給者のシングルマザー・林野愛美を演じた河合優実は、「また、こんな役なの」と思ってしまいましたね。一条真也の映画館「あんのこと」で紹介した2024年の作品で日本アカデミー賞最優秀女優賞に輝いた彼女ですが、一条真也の映画館「ナミビアの砂漠」で紹介した2024年の作品といい、一条真也の映画館「敵」で紹介した2025年公開の作品といい、人生に疲れた幸薄い女性の役が多いです。確かに幸薄い女の役が抜群にうまいのですが、これがあまり続くとマンネリになると思います。ブログ「不適切にもほどがある!」で紹介した2024年放送のTVドラマで見せたような明るい役もスクリーンで見せてほしいですね。

 見どころなのは、北村匠海と河合優実の演技だけではありません。異常なほど正義に固執する佐々木の先輩・宮田有子を演じる伊藤万理華、シングルマザーの愛美を脅迫して肉体関係を迫る佐々木の先輩・高野洋司を演じる毎熊克哉、愛美の友人で風俗店に努める梨華を務める箭内夢菜、生活保護を不正受給するドラッグの売人・山田吉男を演じる竹原ピストル、夫に先立たれ息子との困窮した生活から万引きに手を染める古川佳澄を演じる木南晴夏、そして裏社会の住人で佐々木を陥れようと裏で糸を引く首謀者・金本龍也を演じる窪田正孝。以上の役者陣も、それぞれ「クズ」と「ワル」を熱演しています。ただし、ただし、シングルマザーの古川佳澄だけは「クズ」と呼ぶにはあまりにも気の毒でした。いじめ・差別をテーマにした映画が苦手なわたしですが、本作の困窮者をリアルに描いた部分には心が痛みました。貧困ビジネスだけは許せません!