No.1197
1月9日から公開のアメリカ映画「コート・スティーリング」をローソン・ユナイテッドシネマ小倉のレイトショーで鑑賞しました。正月に観る映画といえば痛快娯楽作品に限りますが、この映画はまさにそれ。大いに楽しめました!
ヤフーの「解説」には、こう書かれています。
「1990年代末のニューヨークを舞台にしたクライムアクション。隣人の飼い猫を預かったことをきっかけに、マフィアたちから脅迫される事態に陥った青年の姿を描く。監督は『ザ・ホエール』などのダーレン・アロノフスキー。『エルヴィス』などのオースティン・バトラー、『シャーリー・チザム』などのレジーナ・キング、『ダイバージェント』シリーズなどのゾーイ・クラヴィッツのほか、リーヴ・シュレイバー、ヴィンセント・ドノフリオらが出演する」
ヤフーの「あらすじ」は、以下の通りです。
「1998年、ニューヨーク。メジャーリーグのドラフト候補だったものの、今はバーテンダーとして働きながら、恋人のイヴォンヌ(ゾーイ・クラヴィッツ)と一緒に暮らしているハンク(オースティン・バトラー)。隣に暮らす風変わりなラス(マット・スミス)から猫の世話を頼まれ、親切心から引き受けたハンクだったが、それをきっかけに街中のマフィアが次々と彼の家へ乗り込んでくる」
オースティン・バトラーが演じる本作の主人公・ハンクは、映画の開始早々、とんだ巻き添えを食って痛い目に遭います。それも腎臓が破裂するほどの暴行を受けて、一生アルコールが飲めなくなるという災難でした。わたしも酒好きなので「一生、酒が飲めない」という宣告を受けたら、どんなに辛いかを想像しました。でも、実際に世の中にはそういう方は多いと思います。どんな災難に遭っても、どんなに辛くとも、まずは生きることが先決だと思いました。
それにしてもハンクをつけ狙うロシアのマフィアは執拗かつ残酷です。それに加えて、ハンクはユダヤ人の兄弟にも狙われます。その兄弟の名は「ドラッカー」というのですが、そういえば世界最高の経営学者ピーター・ドラッカーもユダヤ人であったことを思い出しました。それにしても、一条真也の映画館「ワーキングマン」で紹介した映画もそうでしたが、アメリカのアクション映画はロシア人を悪役にするのが本当に好きですね。単純といえば単純ですが。
何もしていないのに犯罪に巻き込まれ、主人公が逃げまくる映画といえば、一条真也の映画館「ナイトコール」で紹介した2025年のフランス・ベルギー映画を連想します。ベルギー・ブリュッセルで夜は鍵屋として働く学生のマディ(ジョナタン・フェルトル)は、クレール(ナターシャ・クリエフ)という女性から部屋の鍵を開けてほしいと頼まれて彼女と一緒にアパートへ向かい、ドアを解錠する。クレールは部屋に置いてあったバッグを手にすると、現金を下ろしに行くと言ってマディを部屋に待たせるが、そこへヤニック(ロマン・デュリス)という男が現れる。ヤニックはマフィアで、部屋もバッグも彼のものだった。マディは自分の無実を証明するため、街に出てクレールとバッグを捜そうとするのでした。
「コート・スティーリング」では、ハンクがロシアン・マフィアやユダヤ人のドラッカー兄弟からニューヨークの街を逃げ回ります。街の風景にワールド・トレードセンターのツインタワーが映っていたのがなつかしかったです。9・11米国同時多発テロによってツインタワーが崩壊したのは2001年。この映画は1998年の設定なのでまだ存在しているわけです。ダーレン・アロノフスキー監督は「当時、ニューヨークのどこからでもツインタワーがよく見えた」と語っていますが、「自由の女神」とともにNYCのアイコンであり、シンボルだったことを再確認しました。
「コート・スティーリング」には、ワールド・トレードセンターのツインタワー以外にも、現在は存在しない場所が映っていました。伝説のレンタルビデオ店「キムズ・ビデオ」です。一条真也の映画館「キムズビデオ」で紹介した2025年のドキュメンタリー映画があります。1990年代のニューヨーク。5万本を超える貴重な映像作品を取りそろえたレンタルビデオ店のキムズビデオには、映画ファンたちが通い詰めていました。しかしビデオレンタルの時代は終わりを迎え、キムズビデオは2008年に閉店。そこで社長のキム・ヨンマン氏は、イタリア・シチリア島のサレーミという村に、自身の大量のコレクションを譲渡することを決めるのでした。
「コート・スティーリング」のメガホンを取ったダーレン・アロノフスキーは好きな監督です。1969年にニューヨークで生まれた彼は子どもの頃から創作活動を好み、ハーバード大学で映画を専攻。卒業制作の短編作品「Supermarket Sweep」(1991年)が高い評価を得ました。「π」(1998年)で長編監督デビューを果たし、インディペンデント・スピリット・アワードで新人脚本賞を受賞。ミッキー・ロークを主演に迎えた「レスラー」(2008年)でベネチア国際映画祭の金獅子賞を獲得。
その他のアロノフスキー監督作には、2010年の「レクイエム・フォー・ドリーム」「ブラック・スワン」(ベネチア映画祭オープニング作品)があります。「ファウンテン 永遠につづく愛」(2006年)のヒロイン、レイチェル・ワイズと2006年に婚約しましたが、2010年に破局しています。一条真也の映画館「ザ・ホエール」で紹介した2023年のブレンダン・フレーザー主演作はアカデミー賞2冠に輝きました。なんとも奇妙で、観ていて切なくなる映画でしたね。
「コート・スティーリング」は何といっても主演のオースティン・バトラーが良かったです。1991年、カリフォルニア州アナハイムで生まれた彼は、13歳の時に街角でエキストラ関係のマネージメント会社にスカウトされ、2005年から複数のテレビドラマにエキストラとして登場。公立の学校に通学していましたが、仕事の関係でホームスクーリングに切り替えたそうです。2009年に公開された「屋根裏のエイリアン」初めて長編映画に出演を果たして、メインキャストのジェイク・ピアソン役を演じました。2019年、一条真也の映画館「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で紹介したクエンティン・タランティーノ監督の映画で、カルト集団「マンソン・ファミリー」の一員であるテックス・ワトソンを演じ、強烈なインパクトを残しました。
2022年、一条真也の映画館「エルヴィス」で紹介したバズ・ラーマン監督のエルヴィス・プレスリーの伝記映画で、オースティン・バトラーは主役のエルヴィス・プレスリーを演じました。第75回カンヌ国際映画祭でプレミア上映された際には、エルヴィスの元妻プリシラから「完全に魅了された」と称賛され、娘リサも「最高に素晴らしかった」とコメント。その後もバトラーの演技は批評家から絶賛され、英国アカデミー賞やゴールデングローブ賞の主演男優賞を受賞。第95回アカデミー賞でも主演男優賞にノミネートされました。
2024年、一条真也の映画館「デューン 砂の惑星PART2」で紹介したドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のSF大作で、悪役フェイド=ラウサを演じました。残忍で恐ろしいパフォーマンスや、肉体改造によって、ここ数年間で史上最高の悪役と評されました。さらに一条真也の映画館「エディントンへようこそ」で紹介した2025年のアリ・アスター監督の最新作では、カルト団体の教祖ヴァーノンを怪演していました。オースティン・バトラーは、いま最も目が離せない俳優になりましたね!


