No.534


 日本公開が延期され続けた怪獣映画「ゴジラvsコング」がついに7月2日に公開、早速観ました。公開前のネットでの評価は低かったですが、怪獣好きのわたしは大変楽しみにしていました。しかし、実際に鑑賞してみると、睡魔との戦いという過酷な現実が待っており、残念な映画鑑賞となりました。ぶっちゃけ、つまらなかった!(涙)

 ヤフー映画の「解説」には、「『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』に続く"モンスター・ヴァース"シリーズ第4弾となるアクションアドベンチャー。モンスターの戦いで甚大な被害を受けた地球にゴジラが再び出現し、人類はキングコングに戦わせようとする。メガホンを取ったのは『サプライズ』『Death Note/デスノート』 などのアダム・ウィンガード。『ターザン:REBORN』などのアレキサンダー・スカルスガルドや前作にも出演したミリー・ボビー・ブラウンやカイル・チャンドラーなどのほか、日本からは小栗旬らが出演する」と書かれています。

 ヤフー映画の「あらすじ」は、「モンスターたちの戦いの後、特務機関モナークが巨大怪獣(タイタン)の故郷(ルーツ)の手掛かりを探る中、深海からゴジラが再び現れる。世界の危機を前にゴジラが暴れまわる原因を見いだせない人類は、キングコングを髑髏島(スカルアイランド)から連れ出し、ゴジラと対決させようとする」です。

 わたしは子どもの頃、多くの同世代の男の子たちと同じように、怪獣少年でした。特にゴジラが大好きで、夏休みにゴジラ映画の新作が上映される「東宝チャンピオンまつり」を楽しみにしていました。大学生になってゴジラ映画が続々とビデオソフト化され、わたしは高田馬場のレンタルビデオ店でそれらを片っ端から借りて観ました。中でもお気に入りだったのが、「ゴジラ」シリーズ第3作の「キングコング対ゴジラ」でした。わたしが生まれる前年の1962年8月11日に公開された東宝創立30周年記念作品で、監督が本多猪四郎、特技監督が円谷英二でした。キングコングの権利を所有していたRKO社とのライセンス提携作品でしたが、アメリカを代表する怪獣・キングコングを相手役に迎え、日米を代表するモンスター同士の対決が話題となりました。2大怪獣が日本列島を舞台に大格闘を繰り広げる姿に、幼いわたしは心を躍らせました。

 2014年、怪獣映画の傑作として映画史に名を残す「ゴジラ」を、ハリウッドが再リメイクしました。一条真也の映画館「GODZILLA ゴジラ」で紹介した映画です。ワーナー・ブラザーズの「モンスターバース」第1作で、突如として出現した怪獣ゴジラが引き起こすパニックと、ゴジラの討伐に挑む人類の姿を壮大なスケールで活写。「モンスターズ/地球外生命体」のギャレス・エドワーズがメガホンを取り、キャストには「キック・アス」シリーズなどのアーロン・テイラー=ジョンソン、そして日本の渡辺謙らの実力派が結集。ゴジラの暴れぶりもさることながら、凶悪度の増したデザインに息を呑みました。

 2017年、ワーナー・ブラザーズは「モンスターバース」第2作として、一条真也の映画館「キングコング:髑髏島の巨神」で紹介した映画を発表。キングコングを神話上の謎の島に君臨する巨大な神として描いたアドベンチャー大作です。島に潜入した調査隊が正体不明の巨大生物と遭遇し、壮絶な死闘を繰り広げます。監督は、主にテレビシリーズに携ってきたジョーダン・ヴォート=ロバーツ。調査遠征隊のリーダーを「マイティ・ソー」シリーズなどのトム・ヒドルストンが演じるほか、「ルーム」などのブリー・ラーソン、サミュエル・L・ジャクソンらが共演。巨大な体でリアルな造形のキングコングの迫力に圧倒されました。

 そして、2019年に発表された「モンスターバース」の第3作が、一条真也の映画館「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」で紹介した映画です。「GODZILLA ゴジラ」から5年後の世界が舞台で、モスラ、ラドン、キングギドラらの神話時代の怪獣たちが復活、世界は破滅へと歩みを進めます。ゴジラをはじめとする怪獣たちと、それに相対する人類を活写しました。メガホンを取るのは「スーパーマン リターンズ」などで脚本を担当したマイケル・ドハティ。ドラマシリーズ「ブラッドライン」などのカイル・チャンドラー、「マイレージ、マイライフ」などのヴェラ・ファーミガ、「シェイプ・オブ・ウォーター」などのサリー・ホーキンス、そして渡辺謙らが出演しました。

「モンスターバース」には、ゴジラやキングコング以外にも多くの怪獣たちが登場します。前3作を大いに楽しんだわたしは、シリーズ第4作となる「ゴジラvsコング」を心待ちにしていました。コロナ禍で何度も日本公開が延期されてきたこともあって、公開日の前夜はまるで遠足の前夜の小学生みたいに興奮して眠れませんでした。上映が開始されると、東宝、ワーナー・ブラザーズ、レジェンダリーと3連発のオープニング・ロゴに心をときめかせました。そして開始わずか1秒でキングコングが登場し、驚きました。しかしながら、続いてコングのモーニングルーティーン的なシーンがのどかなBGMに乗って流れ、拍子抜けします。「なんじゃ、こりゃ?」と思ったわたしは、一気に緊張感を失ってしまい、それ以降は前夜の睡眠不足もたたって睡魔との戦いとなったわけです。

 もちろん、それなりに見どころはありました。コングが棲息する髑髏島(スカルアイランド)の正体がわかったときには軽い驚きがあり、地球の地下の空洞に恐竜たちの住むロストワールドが広がっているという世界観などは、わたしが愛読するジュール・ヴェルヌの『地底旅行』やコナン・ドイルの『失われた世界』といったSFの古典を彷彿とさせてワクワクしましたが、イルミナティの名前まで出たのには白けてしまいました。やりすぎです。コングが地底世界から一気に香港へ舞台を移すのも違和感がありましたね。でも、CG技術は流石でしたし、ゴジラとコングの激突はド迫力そのものでした。プロレスのスタン・ハンセンvsブルーザー・ブロディみたいでした。そういえば、ブロディのニックネームは「キングコング」。ハンセンとブロディのタッグは「超獣コンビ」と呼ばれました。

 さて、ゴジラとキングコングといえば、両者とも怪獣界のトップを張る超大物です。超大物同士が対決する映画といえば、「エイリアンvsプレデター」とか、「ジェイソンvsフレディ」とか、一条真也の映画館「貞子vs伽椰子」で紹介したJホラーのクイーン対決とか色々ありますが、「ゴジラvsコング」に最も近い作品は、2013年3月25日に日本公開された一条真也の映画館「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」で紹介した映画でしょう。世界的人気を誇るスーパーヒーロー、スーパーマンとバットマンが互いに全力を尽くしてバトルに挑む姿を描くアクション大作です。英雄から一転、悪に傾倒したスーパーマン相手に激しい戦いを繰り広げる人類の最後の希望バットマンとの最終対決を映し出しました。人智を超えた能力を持つ2人の死闘は迫力満点でしたが、じつは両者の戦闘能力には大きな差がありました。というのも、バットマンは単なる人間ですが、スーパーマンは宇宙人だからです。

 それと同様に、ゴジラが放射能怪獣であるのに対して、キングコングは単なる巨大な猿であり、ガチで闘ったらゴジラの方が強いと思います。はい。さらに、ゴジラとキングコングには決定的な相違点が存在します。それはゴジラは爬虫類で、キングコングは哺乳類、それも人類と同じ霊長類であるということです。ならば、観客がコングに感情移入することは当然です。しかも、この映画ではゴジラが感情のない怪獣(それでも、ファーストコンタクトでコングに一発殴られたときはニヤッと笑ったように見えました)として描かれているのに対し、コングは笑ったり、怒ったり、寒がったり、じつに豊かな感情の数々を見せてくれました。ゴジラは「破壊神」で、コングは「守護神」という位置づけですが、人類にとってキングコングとは「われら霊長類の神」といったような存在なのでしょう。

 その神は、スカルアイランドから南極まで運ばれるとき、鎖で縛りつけられていました。それは哀れな姿でしたが、わたしは日本人にとっての象徴的な存在が縛られている現状を連想しました。そう、天皇陛下のことです。日本人が新型コロナウイルスの変異株に感染することを憂慮された陛下は東京五輪の強行開催に強い不安を持たれており、宮内庁長官がそれを拝察して公表したところ、「天皇の政治的発言だ」などと批判され(そもそも、天皇が国民を心配することのどこが政治的なのか?)、菅首相をはじめ現政権には無視されました。三島由紀夫が生きていれば、さぞ怒り嘆いたことでしょう。あまりにも無礼きわまる天皇陛下へのふるまいに、わたしは怒り心頭です。そして、霊長類の神たるキングコングが鎖で繋がれている不自由な姿を目にして、畏れ多くも陛下のご心情を想った次第です。

 この映画にはもう一体の重要なタイタン(怪獣)が登場します。こいつが原因で、眠っていたゴジラが暴れることになるのですが、ネタバレになるので、これ以上詳しいことは書きません。しかし、後半の展開は1973年7月18日に「東映まんがまつり」の一編として公開されたアニメーション映画「マジンガーZ対デビルマン」みたいでした。要するに、両雄が対決するのではなく共闘するというストーリーですが、これは事前に予想がつきましたね。「マジンガーZ」といえば、永井豪のマンガが原作で、生身の人間が巨大なロボットを操縦するという物語です。このアイデアは、後の「機動戦士ガンダム」や「新世紀エヴァンゲリオン」にも受け継がれました。それとまったく同じアイデア「ゴジラvsコング」の第三のタイタンにも使われています。そのタイタン(ロボット?)を操縦する人物の正体を見て、思わず笑ってしまいました。

 かなり残念だったのは、この作品がハリウッド初進出となった小栗旬です。日本映画を代表する俳優の1人である彼ですが、かなり不遇な扱いを受けており、セリフも3つしかありませんでした。それでは、ブログ「二度目の映画出演」で紹介したわたしのセリフの数と同じではないですか!(笑)「オレの演技が足りなかった・・・小栗旬、念願のハリウッドデビューにも『悔しさしかない』」という読売新聞オンラインの記事によれば、小栗旬の英語のアクセントがひどかったせいで、大幅に登場シーンを削られてしまったとか。それにしても、彼ほどの名優に対してハリウッドは酷な扱いをするものですね。最後は、白目まで剥いてましたし。(涙)一条真也の映画館「ミュージアム」「人間失格 太宰治と3人の女たち」「罪の声」「キャラクター」で紹介した日本映画では素晴らしい存在感を示していた彼ですが、英語が苦手ならば無理にハリウッド進出に固執せず、日本映画界の至宝を目指すべきだと思うのはわたしだけではありますまい。

 何もかもが残念だった小栗旬と違って、「ゴジラvsコング」で存在感を放っていたのが「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」に続いてマディソン・ラッセル役を演じたミリー・ボビー・ブラウンです。イギリスの女優、モデルですが、2004年生まれで現在17歳。父は不動産業者でしたが、4歳の時に一家はイギリス南部ドーセットのボーンマスに移り、それから4年後にアメリカ合衆国フロリダ州のオーランドに移住。2013年、ABCテレビドラマ「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ワンダーランド」にゲスト出演して演技デビュー。2014年にマディソン・オドネル役でBBCアメリカのパラノーマル・スリラードラマ「アンデッド」に出演しました。2017年1月にカルバン・クラインの「バイ・アポイントメント」キャンペーンに起用され、モデルデビュー。そして翌月にモデルエージェンシーのIMGモデルズと契約。それから、2019年に「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」で映画デビューしたというわけです。

 彼女がブレイクしたのは、2016年にネットフリックスが配信した大ヒットSFホラードラマ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」です。1980年代のアメリカの小さな町ホーキンスを舞台に、謎のクリーチャーが巣くう"裏側の世界"とつながってしまった、怪奇事件を描いた物語。ある日突然、行方不明となった友人を探すオタク少年たちが、謎の超能力少女イレブン(エル:ELEVENの頭2文字)と出会ったことで、巨大な陰謀に巻き込まれていきます。この作品でイレブンを演じたミリーは一躍スターダムにのし上がり、 全米映画俳優組合賞女優賞にノミネート、全米映画俳優組合賞アンサンブル賞を共演者と一緒に受賞しました。わたしは、この「ストレンジャー・シングス 未知の世界」が好きで、シーズン3まで鑑賞しています。シーズン4は現在アトランタで撮影中とのことで、配信開始日はまだ明かされていません。配信が開始される日を楽しみにしています!